難防除雑草プロジェクト
除草剤が効かない難防除雑草が国境を超えて次々と侵入していますが、農業生産現場や河川、道路などの公共の場では人手不足で管理が行き届かず、雑草の繁茂が各地で大きな問題になっています。最も有効な対策は日本への侵入の阻止、国内・地域内での繁殖体の移動経路の遮断であり、侵入してしまった雑草に対しては効率的な防除を可能にする新技術が求められます。本プロジェクトでは、個体群の広域動態や生活史の解明に基づいて、それぞれの段階で有効な対策技術を用意し、難防除雑草の根絶・低密度管理をめざします。技術開発は、脱炭素社会や生物多様性の主流化など、国際的な潮流に対応して、持続可能性を科学的に検証しながら進めます。
地域植生プロジェクト
地域の生態系を支える植生(ある場所に生育する植物の集団)は、私たち人間の豊かな暮らしにも不可欠な存在です。しかし近年、地域植生の相観、構造、種構成は、少子高齢化や過疎化の進行などの社会システムの変化に伴って大きく変化しています。こうした地域植生の変化は、望まれない状況で雑草が繁茂したり、繁茂した雑草をすみかとする野生鳥獣などの有害生物を増やしたり、地域を特徴づける風景を悪化させるなどの問題を生じさせます。本プロジェクトでは、植生の多面的な解析を通じて、地域が抱える植生を巡る課題を抽出し、安全かつ持続的で、私たちの暮らし、文化に調和した植生管理の方針と技術を主にフィールドサイエンスの視点から探索します。
鳥獣害プロジェクト
高度経済成長期以降、薪炭林の利用低下や耕作放棄地の増加によって、野生鳥獣の好適生息地が国内に広がりました。その結果、ニホンジカやイノシシなどの分布域が急速に回復し、各地で農林業被害が発生しています。また、野生鳥獣に起因するCSF(豚熱)や鳥インフルエンザなどの感染が拡大し、甚大な経済的損失が課題となっています。こうした野生鳥獣と人との軋轢を解消するため、本プロジェクトでは、個体群生態学などの基礎分野だけではなく、野生動物管理や生態系保全といった応用研究も行い、雑草管理による生息地マネジメントを基軸とした鳥獣対策システムの開発をめざします。